糖尿病の犬は、さまざまな感染症
にかかりやすく、また重症化しやすく
なります。
感染症は糖尿病の合併症の一つであり、
血糖値が高くなることで白血球など
免疫に関わる細胞の機能が低下すること
によって起こります。
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感染症は、全身のさまざまな臓器や
組織で起こりますが、その中でも
外見上、一番分かりやすいのが皮膚の
感染症です。
皮膚炎など皮膚の異常から
糖尿病が分かる場合もありますし、
糖尿病の進行に伴い、少しずつ皮膚に
病変が現れてくることもあります。
感染症については病態や個体差も
ありますが、犬はもともと皮膚の表皮
が薄いこともあり皮膚トラブルが多い
動物ですので、糖尿病の合併症と
しても皮膚の感染症は起こりやすいと
言えます。
こちらでは、犬の糖尿病と皮膚の異変、
感染症などの関連性や治療、予防の
ための対策などについてまとめて
みましたので参考にしてください。
<糖尿病と皮膚感染症の関連について>
糖尿病になると、細菌や真菌、ウイルス
などのさまざまな皮膚疾患が起こりやすく
なります。
そして、糖尿と皮膚合併症には、
主に以下の原因が大きく関係しています。
【免疫細胞の機能低下】
高血糖状態が続くと、
*好中球
白血球の約60パーセントを占める。
運動性と細菌などの食作用(貪食)が著しい。
炎症の場で活躍、増殖する。
*単球
白血球の約7パーセントを占める。
白血球中最も大きいく、細菌などの
殺菌効果や食作用(貪食)の機能が強い.。
*NK細胞
ナチュラルキラー細胞、リンパ球の一種。
がん細胞やウイルスに感染した細胞など
異常な細胞を見つけ次第、攻撃する。
*T細胞
リンパ球の一種で、血中リンパ球の
60~80%を占める。
抗原刺激に応答、他の免疫細胞の働きを
調節する司令塔の役割を果たす。
などの、体の中に侵入してきた
ウイルスや細菌などから、体を
守っている免疫細胞である白血球の
働きが低下します。
つまり、生体を防御する機能が
正常に働かなくなり、さまざまな
感染症にかかりやすくなるのです。
また、皮膚にできた傷なども治りにくく
なります。
【血管障害】
糖尿病の合併症の一つに血管障害が
あります。
高血糖状態が続くと、
*血管の中にブドウ糖が変化した物質
(ソルビトール)が蓄積
*浸透圧の関係で血液の量が多くなり高血圧
になる→血管の壁に強い負荷がかかる
*糖尿病は中性脂肪も高くなりやすく、
血液中の過剰な脂肪は血管の壁に溜まっていく
などから血管障害が起こります。
そして皮膚は血管障害の影響を受けやすい
臓器です。
特に四肢(手足)など体の末端部は
影響が顕著に現れます。
血管障害が起こると血流が悪くなるため、
傷の治癒に必要な栄養や病原体に抵抗
する免疫細胞などが病変に届かなくなります。
そのため、感染症は悪化しやすく、
また治療のための抗生物質などの薬剤も
届きにくくなるため、治りにくくなります。
【神経障害】
血管障害による血流低下や、末梢神経
の代謝異常によって不必要な物質が
溜まってしまうことにより神経の働きにも
障害が起こります。
末梢神経障害は、主に
*知覚神経障害
触覚、痛覚、温度覚などが鈍くなったり
消失する
*運動神経障害
全身の筋肉を動かす機能が鈍くなったり
消失する
*自律神経障害
意志と無関係に、体の機能を自動的に
調節する神経が鈍くなったり消失する
がありますが、そのうち特に皮膚感染症
に影響を与えるのが「知覚神経障害」です。
知覚神経障害になると、傷や炎症
などに対する痛みや痒みなどの感覚が
麻痺したり鈍くなってしまうため、
行動変化に気付きにくく、治療が遅れがちになります。
また、感覚が鈍くなるため、そこを
庇ったりしなくなり、足先などの
病変は歩くたびに床や地面にこすったり
することもあり、悪化しやすくなります。
さらに運動神経障害によって筋肉が
萎縮し、足を引きずったりなど正常な
歩行ができなくなると、創傷を起こす
リスクも高くなります。
これらが糖尿病による皮膚感染症の
原因となっています。
<糖尿病の合併症における皮膚感染症の治療について>
細菌、真菌、ウイルスなど皮膚の
感染症にはさまざまな原因があります。
また、糖尿病になると通常では感染する
ことなく生体に影響を与えない微生物など
によっても、簡単に感染を起こす
「易感染(いかんせん)状態」となること
もあります。
そのため、皮膚にみられる病変の
原因や状態はさまざまです。
いずれにしろ皮膚疾患の治療は
通常の皮膚に対する治療が行われます。
原因によって、抗菌剤や抗ウイルス剤
など。
ただし、前述したように糖尿病による
血管障害があると、薬剤も患部に
届きにくくなる傾向にあるため、薬剤
の効果が悪い場合などは血流を良く
する薬剤など血管障害に対する治療も
併用する必要性が出てくることもあります。
また、当然ですが原因は高血糖にある
ため、血糖値を適切にコントロールする
ことが何より重要になります。
*血糖値を目標の値で維持する
*皮膚に対する治療
*血管障害に対する治療
状況に応じてこの3つを組み合わせて
皮膚の治療を行なっていきます。
ただ、治りにくいのはもちろん、
改善したとしても血糖値の状態によっては、
再発も多くなりますし、悪化すればするほど
治りづらくなるため、なるべく早期に適切
な治療を行うことが大事です。
また、糖尿病では皮膚の合併症が
起こることも多いということを理解して、
こまめな皮膚のチェックはもちろん、
予防に努めることも大事です。
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<皮膚感染症の予防について>
根本的な原因は、高血糖など体の
内部にあるため、血糖値をうまく
コントロールすることが一番の予防策
になりますが、皮膚においては外部から
ケアすることで、感染症のリスクを
ある程度、減らすことも可能です。
糖尿病になると真皮への血流減少に
よって真皮が薄くなり、また表皮への
酸素や栄養供給も減少するため、
皮膚が乾燥してドライスキンとなります。
さらに表皮と真皮結合力が低下し、
表皮が剥離しやすくなるので、
損傷しやすい皮膚になります。
そのため、まずできることは、
皮膚の保湿です。
皮膚の保湿については、犬の皮膚病全般
で良い効果がみられることが多いため、
糖尿病においても積極的に行うといいです。
保湿剤は皮膚のバリア機能の異常に
対するスキンケアとして推奨されています。
保湿材について、オススメなどはこちら↓
そして、感染症の予防には当然ですが
皮膚の状態を常に清潔に保つことが
大事です。
ただ、頻繁なシャンプーなどは
逆に皮膚の乾燥を招くことにも
なるため、特に汚れがひどくない場合
には、通常通りのシャンプーにして、
ブラッシングなどをこまめにして
抜け毛や毛についた汚れを落として
あげるようにしましょう。
また、陰部の周りは排泄物などが
残りやすく、その周囲は炎症が
起こりやすくなりますので、汚れが
残っている場合は、濡れタオルなど
で拭き取ってあげるようにしましょう。
そして皮膚感染症もそうですが、他の
合併症を防ぐためにもしっかりと
血糖値の管理が行えるよう、定期的な
受診はもちろん、少しの異変も早期に
発見、治療が行えるように注意深く
観察するようにしてくださいね。
糖尿病は治る病気ではありませんが、
インスリン投与と食事療法で血糖値
が維持できれば、あまり苦痛を与えず
元気に過ごさせてあげることも可能です。