犬の気管虚脱は、特に小型犬で多く
見られ、中~高齢での発症率が高い病気です。
初期では軽い咳が出る程度なので
あまり重症のイメージはないかも
しれませんが、基本的に犬で咳が出る
のは怖い病気が多いです。
(心臓病や肺水腫など)
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そして気管虚脱も同様で悪化すると
呼吸困難~窒息で亡くなってしまう
可能性がある病気です。
また、そうなるまでの過程も激しい
苦痛を伴います。
ですから、まずは早期にしっかりと診察、
診断を受け、適切な治療を行い悪化を
防ぎ、症状を抑えることが大事です。
こちらでは、犬の気管虚脱の検査や
診断(グレード)、症状や治療法、注意点
などについてまとめてみましたので参考
にしてください。
<犬の気管虚脱の検査>
犬の気管虚脱は、気管を筒状に維持する
気管軟骨が弱く柔らかくなり、気管が潰れて
(扁平化)しまう病気です。
出展:https://tsuda-vet.com/
検査は、通常のレントゲンで診断できます。
気管内部の詳細を診るには、気管内視鏡
が必要になりますが、内視鏡の検査は
全身麻酔が必要になるため、基本的には
行われることはありません。
(気管虚脱のある子の全身麻酔はリスク
が高いため)
出展:https://blogs.yahoo.co.jp/familyah/
出展:http://www.sennan-ah.com/
出展:http://www.hosaka-ah.co.jp/
気管虚脱の診断には、基本的には
レントゲンだけで大丈夫ですが、
気管虚脱のある子は、心臓病(心肥大など)
も発症していることがあり、それらに異常
が見られた場合には、超音波検査などが
必要になることもあります。
(咳の原因が気管虚脱によるものだけ
なのかの鑑別が重要になります)
そして、全身状態の把握のため、血液検査が
行われるのが一般的です。
また、重症の場合には、動脈血液中の
酸素分圧、炭酸ガスなどにより、肺機能を
評価する『動脈血液ガス検査』が行われる
場合もあります。
<犬の気管虚脱の診断・グレード>
気管虚脱は虚脱をおこす部位によって、
吸気(息を吸った時)、呼気(息を吐いた時)
のどちらのタイミングで虚脱を起こすの
かが変わってきます。
最も多いのは頚部気管虚脱です。
進行すると虚脱部位が拡がってきます。
出展:http://www.suematsuvet.com/
そして、気管虚脱の重症度は、
気管の扁平度(潰れ具合)によって
グレード分類されます。
『グレード 1』
気管内腔(断面)の25%以下の狭窄。
膜性壁が内腔に突出。
(C字型をした気管軟骨が途切れている
後ろ側の部分が膜性壁)
軽い咳や少し呼吸が速くなるのが
たまに見られる状態。
『グレード 2』
気管内腔(断面)の25%~50%の狭窄。
気管軟骨が変形、軽度の扁平化。
興奮時など何かのきっかけで咳や
苦しい呼吸、呼吸音が見られる状態。
『グレード 3』
気管内腔(断面)の50%~75%の狭窄。
気管軟骨が変形、中度の扁平化。
咳やガーガーという呼吸音が頻繁に
見られる状態。
『グレード 4』
重度の扁平化。
気管内腔(断面)の75%以上の狭窄。
内腔が消失、ほぼ塞がった状態。
日常的に苦しい呼吸と咳を繰り返し、
薬剤でもコントロールが難しくなって
くる状態。
出展:http://www.suematsuvet.com/
<気管虚脱の症状>
気管虚脱では特徴的な症状として、
『ガチョウの鳴き声のよう』と言われる
ガーガーッという呼吸音と咳です。
乾いた空咳のようなケホケホっという咳
↓
フゴフゴという豚の鳴き声のような呼吸音
↓
ガチョウのようなガーガーという呼吸音
といった具合に悪化していくことが多いです。
また、咳もひどくなると痰を吐くような
重い咳になります。
さらに努力性の呼吸が見られたり、
ヨダレを垂らしたりもあります。
進行すると、連続した咳が出たり、
呼吸困難によるチアノーゼ(酸欠)を起こし
たりと苦しさが増していきます。
呼吸をしても思うように酸素が
取り込めないため、頑張って呼吸を繰り
返すため、気管に負担がかかり、炎症を
起こして腫れてしまうため、さらに気管内
が狭くなるという悪循環が起こります。
youtube ヨーキー
youtube キルシェ動物病院
この状態が長く続くと失神して倒れたり、
治療が遅れると完全に呼吸ができなくなり、
死に至ることもあります。
散歩などの運動中や興奮した時、吠えた
時、食事中や水を飲んだ時、夜間などに
特に咳が出やすくなります。
また、気温が高くなると口を開けて
ハーハーとするパンティングが増え、
それが長く続くことでも気管虚脱は悪化
しますので夏場などは要注意です。
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<気管虚脱の治療法>
気管虚脱の治療法は、
*内科治療
*外科治療
があります。
『内科治療』
内科治療はいわゆる対処療法で、
薬剤の投与によって、気管の炎症を
抑えたり、興奮状態を落ち着けたり、
などの対処療法になります。
状況にもよりますが、重度でなければ
薬剤で一旦、落ち着けることはできます。
*抗炎症剤
(ステロイドがメインとなり、効果は
高いですが、投与量や期間によっては
副作用の心配もあり)
*気管支拡張剤
(テオフィリンなど人では喘息の治療に
使われる気管支を拡げる作用)
*去痰剤(鎮咳剤)
(病原体などを痰や鼻汁によって体外
へ排出しやすくして気管支の炎症や
咳を和らげる)
*鎮静剤
(興奮を抑え、呼吸を落ち着かせるため
少しボーッとする程度の弱めの鎮静剤)
*抗生物質
(気管の炎症により、細菌感染を
起こしている、または起こす可能性
があるときに使用)
など症状に応じて薬剤を組み合わせて
投与を行います。
重症の場合には、酸素吸入(酸素室)が
必要になることもあります。
また、気管虚脱は肥満により悪化するため、
減量するだけでも症状が軽減しますので
肥満傾向のある犬の場合にはダイエット
が必要になります。
その他、日常生活での注意点、環境改善
として、
*首輪ではなく胴輪にする
(首輪は首の気管を圧迫したり刺激に
なるため)
*興奮させない
(興奮すると呼吸が早くなり気管に負担
をかけ炎症を引き起こすため)
*激しい運動はさせない
(激しい運動も呼吸が速くなり、気管に
負担をかけ炎症を引き起こすため)
*気温や湿度を適切に保つ
(季節にもよるが温度差や乾燥は避ける。
目安として室温20~23℃、湿度50~60%)
*空気清浄機など利用
(空気の汚れは呼吸器に悪影響となります。
特にタバコの煙などは厳禁。
その他、状況によっては空気清浄機など
を活用するのも◎)
などが必要になります。
グレードにもよりますが、基本的には
内科療法と上記に挙げた生活環境の注意に
よって70~80%は有効(コントロール可能)
とされています。(気管虚脱のみの場合)
ただ、内科療法では虚脱した気管を
元に戻すことはできないため、完治させる
ことはできませんので、一生治療を継続
しなくてはいけません。
また、進行していった場合、内科療法
だけではコントロールできなくなってくる
可能性もあります。
(内科療法を行っていても基本的に加齢
に伴い少しずつ進行していきます。)
その場合には外科手術を検討する必要
があります。
『外科治療』
外科治療は手術によって扁平化した
気管を正常に近い内腔の状態に形成
することです。
手術法はいくつかあり、メリットや
デメリットなどあります。
基本的には扁平化した気管に潰れない
ように器具を装着し、気管を拡げる手術になります。
手術が成功すれば気管は拡がり、呼吸も
楽になりますので、完治と言える状態
に持って行くことができ、その後は薬剤
などの投与は必要なくなる可能性は高いです。
気管虚脱の手術について詳しくはこちら↓
<まとめ>
犬の気管虚脱は発症原因も明確には
分かっておらず、治療の難しい病気ですが
なるべく早期に発見、治療を行うことで
進行、悪化を防ぐことも可能です。
また、近年は予後の良好な手術も
推奨されるようになってきました。
発症するのが中~高齢になってからが
多いですが、今は犬の寿命もさらに
伸びてきていますので、なるべく苦しい
思いをさせないように最期のときまで
楽に生活させてあげられるように積極的
に治療をしていくことが必要だと思います。
気管の狭窄によって呼吸が満足にできない
のは相当の苦しさを抱えることであり、
ストレスも伴います。
まずはしっかりと検査をして、診断を
受け、適切な治療法を選択、予後も
見据えて定期的な検診を続けていくこと
が大事です。