犬のてんかんには真性てんかんとも
呼ばれる『特発性てんかん』と何らかの
病気(脳腫瘍や腫瘤、脳炎や水頭症)による
脳の炎症や異常から起きる『症候性てんかん』
があります。
犬種にもよりますが犬の場合のてんかん
の多くは脳に病変などが見つからない
『特発性てんかん』です。
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そしてこの特発性てんかんを根本的に
治療することはできず、対処療法
(飲み薬)によっててんかん発作を
起きにくくする(発作の頻度や回数を
減らす)ための治療が基本となります。
こちらでは犬のてんかんのお薬
(飲み薬や座薬)の種類や効果、副作用
などについてまとめてみましたので
参考にしてください。
また、てんかんの薬は基本的に一生
飲み続けることとなります。
もし飲むのをやめてしまうとどうなる?
という点についてもリスクや起こりえる
問題点についてまとめています。
<犬のてんかんの薬の種類>
犬のてんかんの治療は、てんかんを
根本的に治す治療ではなく、発作を
軽減(少なく、弱く)するための内科療法
(抗てんかん薬)となります。
抗てんかん薬にはさまざまな種類が
ありますが、それらの中から症状に応じて
いくつかを組み合わせて発作をコントロール
していきます。
『フェノバルビタール』
製品名:フェノバール
出展:https://www.qlife.jp/
抗てんかん薬として最もポピュラーに
使用される薬剤です。
バルピツール酸系の長時間型の催眠鎮静薬
で、脳全体の神経を鎮める作用があります。
てんかんによるけいれん発作(全身発作、
部分発作)に効果があります。
投与:
錠剤・散剤 1日2回
副作用:
眠気(ボーっとする)やふらつき、注意力
低下。皮膚の発疹や赤み。
長期投与で肝臓や腎臓への負担、貧血
など。
また、長期連用で効き目が弱くなってくる。
『臭化カリウム』
出展:https://www.qlife.jp/
フェノバルビタールと併用で使われる
ことが多い抗てんかん薬です。
生体内で臭素イオンを遊離し、大脳皮質の
知覚並び、運動領域の興奮を抑制する持続性
の大脳皮質の中枢神経抑制薬です。
弱い安静や鎮静効果の他、てんかんの
抗けいれん作用があります。
投与:
1日2回、粉や液薬として処方。
副作用:
嘔吐、下痢などの消化器症状。
食欲が旺盛になる。
皮膚の痒みや赤み、発疹など。
眠気やふらつき、運動能力低下。
*猫では重い副作用の可能性があるため
あまり使われません。
『ジアゼパム』
製品名:ホリゾンやセルシンなど
出展:https://www.anshin-tuhan.org/
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬
(緩和精神安定薬)です。
脳内のベンゾジアゼピン受容体に働き、
GABAの働きを強め、脳の活動を抑え、
神経細胞の興奮を抑える作用があります。
抗けんれん作用の他、催眠作用や
筋弛緩作用などがあります。
犬では群発発作(1日に複数回の発作)や
重積状態(発作が5分以上続く、繰り返す)
などに使用されることが多いです。
(座薬もあるため、発作が続いて服用が
困難な時などにも使えます)
投与:
錠剤、座薬、注射など。
1日2~3回(状況に応じて)
副作用:
眠気、ふらつき、脱力感。
長期連用で効き目が弱くなってくる。
『ソニサミド』
製品名:エクセグラン
出展:https://www.anshin-tuhan.org/
脳神経の興奮を抑え、てんかんの
けいれん発作を予防する薬です。
比較的新しい薬でさまざまなタイプの
てんかんに効果が期待できます。
副作用の心配が少なく、犬猫ともに有効
ですが、他の抗てんかん薬に比べ価格
が高いです。
投与:
錠剤、散剤 1日2回
副作用:
食欲不振、嘔吐など消化器症状。
『クロナゼパム』
製品名:リボトリール、ランドセンなど
出展:http://meds.qlifepro.com/
ジアゼパムを少し弱くしたお薬です。
脳の神経を鎮めて、てんかん発作が
起こりにくい状態にします。
他、抗てんかん薬との併用や切り替え時
に一時的に使用することが多いです。
投与:
錠剤、散剤
1日2回
副作用:
眠気、ふらつき、ボーっとする。
長期連用で効き目が弱くなってくる。
『ガバペンチン』
製品名:ガバペン
出展:http://meds.qlifepro.com/
GABA誘導体の新しいタイプの抗てんかん薬です。
興奮性神経伝達物質の放出を抑制する
お薬です。
一般的な抗てんかん薬とは作用機序が
異なるため、他の抗てんかん薬と併用
することで、発作の抑制効果が高まります。
投与:
錠剤、液剤
1日3回(状況に応じて)
副作用:
眠気、ふらつき、だるさ。
食欲増進。
などの薬剤が犬では主に使用されています。
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<抗てんかん薬をやめるとどうなる?>
抗てんかん薬はてんかんを治すための
お薬ではありません。
そのため、てんかん自体が治ることは
なく、また抗てんかん薬を投与している
からといって全く発作がなくなるという
ことは基本的にはありません。
あくまでも発作の頻度(回数)を少なく、
また発作の強さを軽減することにより、
脳の損傷を抑制するという目的のための
治療となります。
症候性てんかんの場合は、その原因と
なっている病気にもよりますが、
主に脳圧降下剤と抗炎症剤(ステロイド)
の投与+抗てんかん薬が必要になります。
そして抗てんかん薬の効果を発揮させる
ためには、血中の抗てんかん薬の濃度を
一定に保つことが重要です。
てんかんが起きたから飲ませる、飲むと
いうお薬ではなく、常にてんかんの起こり
にくい状況を維持するために飲み続ける
お薬です。
ですから、飲んだり飲まなかったりなど
で血中濃度にバラつきが出ると発作が
出やすい状況を作ってしまうことになります。
また、発作が起きなくなったからといって
勝手な判断でお薬を飲まなくなると、それまで
薬で抑えられていた電気的ショートが一気に
拡がり、重いけいれん発作(重積)を起こす可能性
があり危険です。(最悪、死亡することもあります)
さらに、そうなってしまった場合、
それまでのお薬では抑えることができなく
なる可能性があります。
てんかんのお薬は基本的に一生、
飲み続けるお薬です。
状態によっては量を少なくしたりなど
はありますが、完全に飲まなくて良く
なることはまずないと心得ましょう。
また、何らかの理由で抗てんかん薬の
服用を中止する場合でも、獣医師の指示に
従い、時間をかけて(1~2ヶ月)薬の量を
少しづつ減らしていって中止する必要があります。
<まとめ>
抗てんかん薬は飲み始めてすぐに発作が
起きなくなったり減ったりすることは
ありません。
一般的に抗てんかん薬を飲み始めて
血中濃度が安定するまでに1~2週間程度
はかかります。
また、薬の効果は個体差もあるため、
発作の状態や血中濃度の測定をしながら
薬剤の量が調整されます。
ですから、お薬を飲み始めて効果が
出てくるとしても早くても2週間程度、
血中濃度が安定しない場合は、薬の
調整や併用などが必要になり、効果が
見られるまで1~2ヶ月程度かかることもあります。
抗てんかん薬の投与で大事なことは、
*毎日決まった時間に飲ませる
*飲み飛ばし、飲み忘れのないように
*勝手にやめない
です。
抗てんかん薬は一生、また長期に渡って
投与が必要となります。
しかし、抗てんかん薬にも副作用は
あり、特に長期になると副作用の
リスクも高まります。
そのため、数ヶ月~半年に1回程度は
血液検査による全身状態の確認が必要に
なります。
そして副作用の状態によっては
薬剤の変更や副作用に対する治療を
行うようになります。(特に肝臓など)
ただ、てんかん発作の頻度はさまざま
ですからそのすべてに抗てんかん薬が
必要とはされない場合もあります。
例えば年に1~3回程度であれば、
副作用の観点からも、また抗てんかん薬
の効果を考えたときに飲ませる必要は
ないと判断されることが多いです。
発作の状態や獣医師の見解によっても
異なりますが、一般的に1ヶ月に1回以上、
また3ヶ月に2回以上の頻度で発作が起きる
ようであれば抗てんかん薬による治療が推奨されます。
また、これらの抗てんかん薬が
効かない『難治性てんかん』と言われる
タイプもあり、それについては、現在でも
さまざまな方法や薬剤の組み合わせなど
研究が続けられています。
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