犬の膀胱炎では原因によって
治療法もいろいろですが、何らかの
原因によって炎症を起こしている状態
がありますので、基本的にまず抗菌剤
(抗生物質)の投与というのは必須となります。
細菌性の膀胱炎だけであれば、
抗生物質の効果は抜群で数回の投与
だけでも症状(頻尿、血尿)の改善が
見られますし、指示された期間しっかり
と投与を行えばちゃんと完治します。
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ただし、膀胱炎の原因となる細菌にも
種類があり、また抗菌薬(抗生物質)も
種類はさまざまで効き目のある菌や
薬剤の特徴に違いがあります。
こちらでは犬の膀胱炎の治療で
使われる主な抗生物質の種類や
特徴、投与期間や副作用などについて
まとめてみましたので参考にしてください。
<犬の膀胱炎の原因菌>
膀胱炎の原因となる細菌は、さまざま
あり、本来であれば治療を行う前に
その原因菌に対する薬剤感受性検査、
細菌培養検査などを行う必要があります。
しかし、これらの検査には4~5日の
期間がかかるため、最初からこれらを
行うことはほとんどなく、まずは膀胱炎に
一般的な抗生物質の投与を始め、効かない
場合には検査・・という流れになることが
ほとんどです。
そして、犬の膀胱炎の原因菌で最も
多いのが、『大腸菌(グラム陰性の桿菌)』
と『ブドウ球菌(グラム陽性球菌)』で
その他、プロテウス、腸球菌などがあります。
<犬の膀胱炎の抗生物質>
犬の膀胱炎の治療に使われる薬剤は
主に、ニューキノロン系・セフェム系・
ペニシリン系の3種類の製剤です。
『ニューキノロン系』
特に大腸菌に強力な効果がある薬剤です。
犬用として使用されることが多いのは、
以下の製品です。
*バイトリル錠(フルオロキノロン系抗菌剤)
バイトリルは動物用の抗菌剤で、
人用としては、クラビット錠などの
ニューキノロン系剤をもとに作られた
お薬で作用機序としては同じになります。
グラム陰性菌や陽性菌、腸球菌属、
プロテウス属など幅広い細菌に対し、
強い殺菌力、高い効果を発揮するお薬です。
犬の膀胱炎では処方されることの
多いお薬です。
*ビクタス錠(フルオロキノロン系抗菌剤)
ビクタスも同じくニューキノロン系剤
の動物用の抗菌剤です。
グラム陰性菌や陽性菌、パスツレラ、
カンピロバクターなど広範囲な菌種に
対して効果を発揮します。
また、他の抗生物質に対して交差耐性
(こうさたいせい)を示しません。
*交差耐性・・1種類の薬剤に対して
耐性を獲得すると同時に別の種類の薬剤
に対する耐性も獲得すること
(化学構造や作用機序が類似している
薬剤間で生じる減少です。)
細菌性の下痢などでも良く使われる
お薬です。
また、ニューキノロン系では
人用の薬剤の『タリビット錠』や
『ノルフロキサシン錠』などが使われる
こともあります。
『セフェム系』
抗生物質としては幅広く使われる
薬剤です。
犬用として使用されることが多いのは、
以下の製品です。
*セファクリア錠
セフェム系抗生物質セファレキシン
を有効成分とする動物用の抗菌剤です。
グラム陰性菌や陽性菌、大腸菌、
プロテウス属などに効果があります。
皮膚の感染症や炎症などの皮膚疾患
にも多く使われるお薬です。
また、セフェム系では、人用の薬剤の
『ラリキシン錠』や『フロモックス錠』
などが使われることもあります。
『ペニシリン系』
こちらも抗生物質としては幅広く
使われる薬剤ですが、ペニシリン製剤
に耐性を持つ菌が増えてきているとも
されています。
犬用として使用されることが多いのは、
以下の製品です。
*アモキクリア錠
ペニシリン系抗生物質アモキシシリン
水和物を有効成分とする動物用の抗菌剤です。
グラム陽性菌、大腸菌の他、
プロテウス属、インフルエンザ菌
などに効果があります。
細菌性の皮膚感染症に使われること
の多いお薬です。
また、ペニシリン系では人用の薬剤の
『パセトシン錠』や『アモキシリン錠』
などが使われることもあります。
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<抗生物質の効果や副作用について>
上記の抗菌剤(抗生物質)の中で膀胱炎
の原因菌として一番多い大腸菌(グラム
陰性菌)に対して一番効き目が強いのは
バイトリル錠などのニューキノロン系薬剤です。
次がセフェム系→ペニシリン系と
続きます。
そのため、膀胱炎などの尿路感染症
ではニューキノロン系の薬剤が第一選択
になることが多いです。
ただし、抗生物質の効果は原因菌に
よって異なるため、グラム陽性菌に
対してはセフェム系やペニシリン系の
方が有効なこともあります。
副作用については、どのタイプの
薬剤でも起こりえるものですが、
抗生物質では特に胃腸障害の副作用
が発現することがあり、
*下痢
*嘔吐
*腹痛
などは比較的多く見られる副作用です。
(胃腸の粘膜保護剤などを同時に
投与することで対策)
また、皮膚や全身性の副作用として
*痒み
*湿疹(蕁麻疹)
*倦怠感
などが起きることもあります。
そして、稀な症状として
*黄疸
*むくみ
*息切れ
*めまい(ふらつき)
*貧血・溶血
*アナフィラキシーショック
などが起きる場合もあります。
また、抗生物質の投与で注意が必要
なのは、長期投与や投与法によっては、
菌に耐性が付いて効果がなくなって
しまう場合があることです。
ですから、効き目が良くない場合
などは早めに薬剤感受性検査を行い、
適切な抗菌剤を投与することが大事です。
<抗生物質の投与期間について>
処方された抗生物質が膀胱炎の原因菌
に効果が出ている場合は、投与期間は
2週間程度が一般的です。
ただし、薬を止める判断は尿検査を
行い、細菌などの状態を確認して大丈夫
であればとなります。
一般的には投与開始後1週間目に尿検査、
効果が出ていればそのまま継続1週間
で再検査、状態が良ければ完治となります。
1週間目の検査で効果が悪い場合には
薬剤感受性検査になることもあります。
また、細菌性の膀胱炎だけではない、
他の原因の可能性も疑われます。
また、細菌性膀胱炎を繰り返す場合
などは、抗生物質の投与だけではなく、
他の対策(予防)などが必要になることもあります。