小型室内犬で多い関節疾患の一つが
膝蓋骨脱臼(パテラ)です。
その原因のほとんどが先天性の
膝蓋骨の溝の問題で、いわゆる膝の
お皿が定位置から外れてしまう病気です。
根本的な治療は外科手術による
溝の形成や靭帯、筋膜などの整復
となります。
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ただ、何らかの理由で手術を行わない
場合、また病状によって手術が適応と
ならない場合などは薬剤投与やサプリ
の内服、体重管理や運動制限などで
症状の軽減や進行(悪化)を防ぐ内科療法
が行われることもあります。
そして、パテラや他の関節炎などに
よって正常な歩行や運動ができない
犬のためのボディサポーターも販売
されています。
それが『室内犬のための
機能性ボディサポーターFIX1』です。
膝蓋骨・股関節・脊椎を保護する
オールインワンの関節補正サポーター。
出展:https://www.peppynet.com/
手術しなくてすむなら・・
これで普通どおりに歩けるなら・・
着せるだけでいいなら・・
などと期待してしまいますよね。
ただ、このサポーターはどんな状態
でも有効なわけではなく、また着せる
ことによってかえって症状を悪化させて
しまう可能性もあります。
そこでこちらでは、犬のパテラで
機能性ボディサポーターFIX1の
有効性やリスク、注意点などについて
まとめてみましたので参考にしてください。
<機能性ボディサポーターFIX1の特徴>
『室内犬のための機能性ボディ
サポーターFIX1』は、
弱った筋肉を補助し、回復をサポート。
パテラの予防や術後のケアに!
とされています。
*このサポーターを着せるだけで
膝関節を保護し、脱臼を予防。
*弱った筋力の回復を補助して正常な
歩行ができるようにする。
*持続的に膝蓋骨を圧迫補正することで
パテラの進行を遅らせる。
などの効果が期待できるわけです。
膝関節においては、膝蓋骨を囲む
ように着圧が加えられているため、
テーピングのような保護&補正効果
があります。
適度な圧迫で歩行時、足の曲げ伸ばし
の際に、太ももや下肢の筋肉の動き
などを正常に保つことで、膝蓋骨が
定位置からずれないようにするわけです。
これによって、パテラがある子でも
歩行中に脱臼を防ぎ、通常通りの
散歩や運動ができるため、筋力を
付けることができ、それによって
さらに膝の補強につながるといった
イメージです。
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)の原因と症状,グレードや治療法など!
<サポーターのメリット>
パテラの犬はグレードにもよりますが
歩行時に痛みなどがあると跛行(びっこ)
や足を庇ったり、正常な足の動きが
できないために、足の筋肉が弱って
しまいます。
膝の関節炎などには、膝の筋肉を
鍛えることが有効ですからそのためには
やはり運動をさせることが大事です。
そのため、このサポーターを
着用することによって運動量を増やす
ことができるのは良いことです。
また、パテラの犬は膝蓋骨が脱臼する
ことにより靭帯や筋肉、また骨などにも
影響で出るため、正常な足の動きを
せず、膝が内側に屈曲した状態や
ガニ股、足を曲げずに歩いたりなど
が日常的になります。
そしてそれがさらに膝関節の悪化、
またその周辺にも負担をかけること
になります。
これを圧迫補正で正常な足の動きで
歩行ができるようになると、膝は
もちろん、その他の部位の負担も
軽くなります。
ですから、これらの効果が問題なく
ちゃんと得られるのであれば、有効
だと思います。
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<サポーターのデメリット(リスク)>
一番の問題はパテラの状態と言えます。
心配なのは、
*膝蓋骨の位置
*運動(動き)時の耐久性
*万が一、着用中に膝蓋骨が脱臼したとき
などです。
『膝蓋骨の位置』
まず、圧力をかけて膝蓋骨を定位置から
外れにくくするわけですから、着せる
段階で確実に膝蓋骨が正しい位置に
あるのかという問題です。
パテラのグレードにもよりますが、
日常的に簡単にパカパカと外れて
しまう子の場合、もし外れた状態
(正しい位置に収まっていない)で
着用してしまうと着用中はずっと
そのままになってしまいます。
こうなると確実に悪化を招きます。
正しい位置に膝蓋骨があるかを
判断するのは飼い主さんでは難しい
と思います。
『運動時の耐久性』
通常の歩行であれば問題ないでしょうが
活発な動き(階段やジャンプなど)の際
にそのまま膝蓋骨の位置を維持できるの
かが疑問です。
(公式サイトでは活発な動きもOKの
ように記載がありますが)
これはサポーターのサイズやフィット感
にもよると思いますが、基本的にその犬
の体に合わせて作られているものでは
なく、XS/S/M/Lという既製品なので
動きによっては・・心配な気がします。
『着用中に膝蓋骨脱臼』
膝蓋骨が外れないようにするための
サポーターですが、前述したように
運動時など万が一外れてしまった場合、
通常は外れたりはまったりを繰り返す
状態であってもサポーターをしていれば
戻らない可能性が非常に高いです。
また、この場合すぐに脱がせれば
まだ良いですが、パテラを繰り返して
いる犬の場合、それでもあまり痛みを
感じずに歩くことができるため、飼い主
さんがそれに気付かない場合もあると
思います。(特にサポーターをしていれば)
この状態も膝にとっては当然、
悪影響となります。
これらのリスクが考えられます。
<サポーターの適応、注意点>
上記のような理由から、サポーター
着用が有効(リスクが少ない)なのは、
*グレード1の症例
通常の歩行時に脱臼することは稀で
進行を予防したい場合
*獣医師の許可が出た場合
着用OK!とされ、着用法や膝蓋骨
の状態、位置をちゃんと手で触って
分かる程度の指導を受けた場合
*パテラの手術後のケア
手術後の再発予防やリハビリ時。
ただ、手術法によっては必要ないこと
も多いです。
などの場合です。
また、当然ですがこのサポーターは
パテラ治療するものではありません
ので、手術を推奨される症例などで
手術回避のためにというのは難しいです。
もちろん、年齢的なものや何らかの
理由で手術を行わない場合などの
ケアとしてはありだと思いますが
その場合にも前述したように着用の
際には十分注意する必要があります
ので必ず獣医師の指導を受けましょう。
かかりつけ医の獣医師の考え方も
ありますし、パテラの状態にも
よりますが、この手のサポーターを
推奨する獣医師はあまり多くありません。
前述したようなリスクがあるためです。
ただ、パテラもさまざまなパターン
がありますし、症状も個体差があり、
内科(温存)療法も色々ですので使って
みたいなと思われる場合、まずは
動物病院で相談してみられることを
オススメします。