犬の副腎皮質機能亢進症
(クッシング症候群)の治療は、
原因にもよりますが、
*外科療法(副腎摘出、下垂体切除)
*内科療法(副腎皮質ホルモン合成阻害剤)
*放射線療法(下垂体に放射線照射)
の3通りあります。
ただ、外科療法や放射線療法は
全身麻酔が必要なこともあり、
またこれら3通りの治療法での
生存期間の差があまりないこと
から、ほとんどの場合、投薬に
よる内科療法が第一選択となっています。
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こちらでは犬のクッシング症候群
の内科療法で使用される、治療薬
の作用や効果、副作用などを
まとめてみましたので参考にして
ください。
<犬のクッシング症候群の治療薬>
犬のクッシングは、副腎皮質ホルモン
の過剰分泌によってさまざまな症状
を引き起こす病気です。
ですから、治療薬としては、この
副腎からのホルモンを抑制(生合成)
を阻害)するお薬の投与となります。
ただし、これらのお薬は投与量の
見極めが非常に難しく、状態の
観察をしながら、慎重にお薬の量
を決めていくようになります。
この治療薬で代表的なのが以下の
2種類ですが作用機序が異なります。
*トリロスタン(製品名デソパンorアドレスタン)
3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素
を可逆的に阻害、副腎ホルモンの
合成を抑制。
*ミトタン(製品名オペプリム)
副腎皮質ホルモン産生細胞への
蓄積毒性により、徐々に副腎皮質
細胞を死滅。
状態にもよりますが、トリロスタン
の方がミトタンよりも効果が弱めで
副作用も少ないとされていますので、
まずはトリロスタンを使う病院が多いです。
『トリロスタン』
低容量でまずは1日1回から
スタートし、1~2週間は同じ
容量で維持します。
ただし、この間に重大な副作用
アジソン病(腎皮質機能低下症)が
現れたときには、一旦お薬は中止
となり、場合によっては輸液など
の治療が必要になることもあります。
副作用の出現がなければ、
状態を見ながら少しづつ投与量
を増やし、クッシングの症状が
治まってくる状態まで持って行きます。
また、投与後にACTH刺激試験
を行い、数値を見ていく場合も
あります。
薬の効果には個体差がありますが、
投与量と投与間隔が、その状態
に合えば、多飲多尿は数日で
改善することもありますし、また
他の症状も1~2ヶ月以内に改善します。
(投与頻度は1~2日に1回程度で
落ち着く場合が多いです。)
逆に投与量などが合わなければ
症状は改善しません。
病院によっても異なりますが、
1~2週ごとに状態を見ながら、
投与量を調節する場合もあれば、
ACTH刺激試験で数値を測り、
投与量を決めていく場合もあります。
投与量と投与間隔が決まれば
維持期間に入りますが、その後も
定期的(数週間に一度)な検査が
必要になり、投与の過不足による
副作用やクッシングの症状が出て
いないかをチェックするようになります。
*トリロスタンの副作用
トリロスタンの過剰投与に
よってアジソン病になることが
あります。
(元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢、
虚脱、ふるえ、高カリウム血症、
低ナトリウム血症など)
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『ミトタン』
ミトタンも少量からの投与ですが、
症状改善のための投薬量に大幅な
個体差があり有効量に開きがある薬剤です。
また、ミトタンは脂溶性のため、
粉末をバターやマーガリンなどに
混ぜて与えると腸での吸収率が
高まるとされています。
ミトタンでは投与後、症状が改善
すれば一旦、お薬を中止して様子を
見ます。
その後、再発がなければ予後は
良好な場合もありますが、すぐに
再発する場合には維持量での継続
が必要になります。
また、トリロスタン同様、
副作用が見られたらすぐに投薬
中止となり、受診が必要になります。
*ミトタンの副作用
ミトタンでは急性の副作用として
消化器障害、肝障害、神経障害
などがあります。
またトリロスタンと同じく
アジソン病もあります。
その他、状況によっては、
*ケトコナゾール(副腎酵素の阻害)
*Lデプリニル(ACTH放出の阻害)
などが使われることもあります。
犬のクッシングの治療は、
個体差もあり、また容態の変動
が大きく、なかなか安定した状態
を保つのが難しいとされています。
ですから、しばらくは通院の
手間やワンちゃんの様子を注意深く
観察する必要があります。
また、副腎皮質ホルモン検査や
お薬などは費用も高めなので大変
かとは思いますが、適切な治療が
行えれば、症状は改善できますし、
良好な状態が維持できれば一般的な
寿命まで生きることも可能です。