犬のクッシング症候群は、
体内で副腎皮質ホルモンが
過剰に産生される病気です。
そしてこの病気は、症状が
多岐に渡り、また中~高齢での
発症が多いため、症状によっては
加齢による衰えや体の変化だと
思ってしまう飼い主さんも多く、
見過ごされてしまうこともある病気です。
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犬のクッシング症候群では、
全身においてさまざまな症状が
現れますが、この病気を疑う
典型的な症状とされるものも
いくつかあり、その中でも見た目
で分かりやすいのが皮膚症状や
脱毛です。
こちらでは、
犬のクッシング症候群においての
皮膚の状態や原因(副腎皮質ホル
モンとの関連性)などについて
まとめてみましたので参考にしてください。
<クッシングの皮膚症状>
犬では、脱毛や皮膚炎などを
起こす病気はさまざまありますし、
高齢になってくると毛量も減って
くるのが普通です。
また、通常は脱毛などを伴う
皮膚の病気は命に関わるものでは
ないというイメージもあります。
そのため、あまり深刻に考えず、
すぐに受診されない飼い主さんも
おられます。
しかし、クッシングという病気は
命にも関わる重篤な症状も起こります。
そして、クッシングによる脱毛や
皮膚症状には特徴があります。
*両側(左右)対称性の脱毛
*皮膚の菲薄化(薄くなる)
*皮膚の石灰沈着(皮膚結石)
などが挙げられます。
体の左右対称の脱毛は、犬の
ホルモン性脱毛症の中でも、
特にクッシングで見られる特徴です。
(甲状腺ホルモン異常による脱毛
でも見られることがあります。)
出展:https://www.kitanosato.com/
また、皮膚の菲薄化は高齢に
なってくると普通でも起こります
が、クッシングの場合にはまさに
紙キレのようにペラペラとなります。
出展:http://dermatology-of-dog.sennan-ah.com/
そして、皮膚の石灰沈着も
一般的な皮膚病では見られること
はほとんどなく、クッシング
での特徴的な症状と言えます。
ですから、これら皮膚の状態を
見ればクッシングの疑いがあると
され、また他の症状などと合わせ
疑いが濃厚となれば検査が行なわ
れることとなります。
<原因(副腎皮質ホルモンと皮膚の関係)>
クッシング症候群で過剰に分泌
された副腎皮質(ステロイド)
ホルモンは、同化を抑制し異化を
亢進させる作用があります。
この同化、異化は簡単に言うと、
代謝(生命が自分自身を維持する
ために行う化学反応)のことで、
同化=体に取り入れた簡単な物質を
複雑な物質(有機物)に合成する過程。
異化=複雑な物質を簡単な物質
に分解する過程。
となります。
この同化と異化のバランスが
取れていれば、新陳代謝が
正常に行われているということに
なります。
そしてこれは皮膚でも起こって
いることです。
過剰な副腎皮質ホルモンによって
同化が抑制され異化を亢進させて
しまうとバランスが崩れてしまいます。
それによって、アミノ酸(皮膚の
原料)の取り込みを低下させ、
たんぱく質の合成が抑えられ、
その一方で、すでにある皮膚の
たんぱく質は分解されてしまう
ため皮膚が薄くなってしまいます。
また、コラーゲンも異化によって
不足、皮膚の弾力性がなくなります。
そして、これら変性した組織に
カルシウム塩が沈着することによって
皮膚の石灰沈着が起きます。
さらに、毛周期にも異常をきたし、
毛根が休止してしまい脱毛を
起こします。
これらが、クッシングで
見られる特徴的な皮膚症状の
主な原因となります。
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<他の症状>
犬のクッシング症候群では、
他にさまざまな症状が起こります。
皮膚異常や脱毛とともに
分かりやすいのが、
*多飲多尿
*食欲増進(異常な食欲)
*肥満
*お腹がポッコリ(膨満)
などです。
また、行動の変化として、
*パンティング(あえぐような呼吸)
*筋肉の虚弱・萎縮(足腰の衰え)
*神経症状(視力障害・旋回など
痴呆症状のような症状)
などがあります。
そして体の中では、
*肝臓の腫大
*内臓脂肪の増加
*高血圧
*精巣萎縮・無発情
*中枢神経障害
などが起こります。
また、原因によっては突然死の
可能性もあります。
早めの診断、治療が大事です。
異変が見られたら早めに受診
しましょう。